あなたにしか出来ないことがある

ある料亭の燗番(お酒を温める当番の人)の男がいました。この男の酒の温め方気に入って好酒家が通っていました。ある時、酒の温め方の秘訣を尋ねるとこう答えが返ってきたそうです。

「二級酒を燗する時は、一級酒にない二級酒の持ち味をどうしたら出せるかと、湯加減と時間に苦心するんです。だから通のお客さんに喜んで頂ける。もしも二級酒を一級酒に見せようと燗に手加減するなら、そいつはインチキで酒に目のきくお客さまから嫌われてしまいます。」と。

酒にそれぞれの味があり、花にそれぞれの香りがあるように、人それぞれの持ち味があり、”一級酒には決してない二級酒の味がある”という言葉にはとても心励まされるような気が致します。

しかし私達は酒ではありません。育ち、成長をすることが出来る生き物です。

私ども日蓮宗の僧侶が信仰する「法華経」というお経の五章にはこのような言葉があります。

「恵みの雲は潤いを含み、電光は光り曜(かがや)き、衆をして悦ばしめ、(中略)雲より出ずる所の一味の水に、草木、叢林(そうりん)は分に随って潤いを受く。一切の諸の木は、上中下等しく、その大小に称(かな)いて各(おのおの)成長する事を得、根・茎・葉と華・果との光色は、一雨の及ぶ所皆、鮮やかに沢(うる)うことを得て、その体と相と、性とは大小に分かれたるが如く、潤す所は、これ一なれどもしかも各(おのおの)滋茂(しげ)るなり。」

美しい詩偈ですが、言葉が難しいですね。今の言葉に訳すと

空から降る雨は一様ですが、草木はその高さや大きさに応じて、それぞれの量の水を吸い、思い思いに成長します。根も茎も枝も葉も、また花や実も雨のおかげで艶々と光り、色も美しくなります。降り注ぐ雨は一様でも、受けるものはそれぞれに成長するのです。この様に仏の教えは一様でも、皆それぞれに育っていくのです。

となります。

またこの様な言葉も書かれています。

「諸々の障碍(しょうげ)を離れ、諸法の中に於いて、力の能(た)えるところに任せて、漸く道に入る事を得るなり。」

今の環境の中で自分の力で出来る範囲の事を精一杯する事が成長への入り口であり、学歴がどうだ素質がどうだという事は障害ではない。

という意味です。

急な環境の変化で、なんとかしないとと気持ちが追い詰められると、自分の力以上に無理をしようとしてしまいがちです。焦らず、自分が吸収できる精一杯を学び、自分の力で出来る精一杯を行い、自分らしく成長していきたいなと思います。

松原泰道先生の「いろはに法華経」を参考に書かせて頂きました。

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